阿部氏は、今後の展望としてカメラ映像の用途拡大を考えています。これまでの防犯目的での活用だけでなく、ピープルカウントや属性検知などマーケティング分野での活用を目指している。同一来店客の来店履歴、来店時の店舗内動線、購買履歴、推定される属性などの分析などです。
これについて、阿部氏は現状では法規制の面でも難しい点を把握しています。個人情報保護法の範囲だけでなく、プライバシー保護の観点からも、より広範な配慮が必要になることです。マスキングや画像解析AIなどで個人を特定できない形まで画像精度を変更して、「防犯とマーケティング分析の双方を、同一システムで実現したい」と阿部氏は抱負を語っています。
イーグルアイネットワークス社のEagle Eye Cloud
VMSシステムは、導入したSHIPSに店舗内の映像監視によるセキュリティ・システムの提供だけでなく、店舗と倉庫管理の効率化を実現し、さらに企業の働き方改革というテーマについても一定水準以上の成果をもたらしました。SHIPSは、今後全ての店舗での導入を推進することで、前述の三つの導入効果を大きく全社的に普及させることができるでしょう。
小売店舗のセキュリティ(クラウド型監視システムの事例)
老舗セレクトショップSHIPSとは
衣類や小物などを販売するセレクトショップの草分け的存在である株式会社シップス(SHIPS)は、1坪半の「ミウラ」として東京上野のアメ横での開店からスタートし、1975年には「ミウラ&サンズ」を渋谷にオープン。その後、1977年に「ミウラ&サンズ」を大元とした「SHIPS」1号店を銀座で開店しました。
現在ではSHIPSブランドで名古屋、札幌、仙台、神戸、大阪などをはじめ日本各地に進出して、現在全国に80以上の直営店舗を構えています。1990年には、自社による物流センターS.C.C(シップス・コントロール・センター)を開設しています。
従前の防犯システム
SHIPSが採用していた防犯対策は、商品・在庫管理の目的で導入したRFIDタグとゲートによるEAS(万引防止システム)でした。しかし、防犯システムとしては、手間とコスト、煩雑な操作、さらに誤作動などの課題が生じていました。そこで2014年にアナログ映像監視システムを導入することになりました。本システム導入にあたりSHIPSが要望した点は、「死角を減らして録画する」ことでした。導入したアナログカメラは店舗によって異なりますが、各店舗10台前後と録画データ記録用DVR1台でした。システム導入時にサポート契約を締結しましたが、契約期間に受けたサポート内容は故障機器の交換程度でした。
アナログ監視システムの問題点
当初導入したアナログ監視システムは、専用画面で確認するためのモニタと録画用ハードディスクなどの機器を各店舗のバックヤードに設置しなければいけませんでした。また、運用管理やメンテナンスの点では、店舗に設置したカメラの故障や、録画機器の機能停止などが重なったこともありました。さらに万引をはじめとする事件発生時に、スタッフが録画データを警察や保険会社などに提出するために、データを複製する作業が必要で、これがスタッフの負担と時間のロスを招きました。
このように様々な問題が発生してきたことで、2016年にSHIPSは監視カメラ・システムの刷新を決断したのです。
次期監視システム選定時の条件
SHIPS側は、システム提案企業に対して、店舗にハード・ディスク・ドライブ(HDD)を設置しないこと、ネットワーク帯域を使い過ぎないことという条件を挙げました。情報システム部課長の阿部一成氏はクラウド型システムの選定を第一条件に加えました。これには、限られたスペースのバックヤードだけでのシステム利用を避け、店内の販売用ネットワーク・システムへの負荷を軽減するという目的がありました。
複数の提案内容を検討した結果、採用したのはイーグルアイネットワークス社Eagle Eye Cloud VMSでした。株式会社シーネット社が導入を担当しました。

